行政書士の仕事は非常に幅広いですが、最も多くの行政書士が手掛けているポピュラーな業務が『建設業許可申請業務』です。
ベテラン行政書士の中でも、この建設業許可申請関連の業務をまったくやったことがない、という方は少ないのではないでしょうか。
建設業許可申請業務とは、建設業法に定められた土木、建築、大工、左官などの29分野の業務で、一定以上の規模で事業を行う場合に必要となる建設業許可の申請業務です。
今は建設業関連をメインにしていない行政書士であっても、行政書士になって初めて受注したのが建設業関連業務だった、という方も少なくありません。
なぜ行政書士業務の中で建設業許可申請業務が人気なのかというと、おおむね以下のような理由があります。
建設業許可申請業務が人気の理由とは?
まず大小零細問わず建設業に携わる業者はとても多く、都市部・地方を問わず需要が非常に高い点があげられます。
また、その他にも建設業許可申請を受注するメリットは多々あります。
許可の更新が必要な業務であること
建設業許可をとった後には、5年に一度の更新申請が必要となります。
また年に一度の事業年度終了報告の提出、役員や専任技術者などの変更があった場合の届出が必要となるなど、継続性、安定性が期待できる業務です。
行政書士業務は単発のものが多い中で、顧客と長く付き合うことのできる継続性の高い業務であるというのは一番のメリットです。
つまり建設業関連の仕事を多く抱えていればいるほど、事務所経営が安定してくることにもつながります。
営業先候補が公開されているのも大きな特徴
何のコネもない新人行政書士が、ただ闇雲に近隣の建設業許可関連の業者を営業して回るのはとても困難ですし、あまりにも非効率です。
ただ実は建設業許可をとっている業者の情報というのは公開されているのです。
多くの場合、都道府県庁の建設業許可申請を扱っている窓口で登録業者の情報を閲覧することができるようになっています。
そこで許可の更新時期が迫っている業者などをピックアップしていけば、ピンポイントで更新申請などの営業を行うことが可能ではあります。
ただし同業者からのクレームに耐えるメンタルは必要
ただし許可を取得している業者には、すでに他の行政書士が関与していることがほとんどです。
そうした業者に営業をかけると、同業者からクレームが入ることも少なくありません。
それでも気にせずどんどん営業をかけられる強いメンタルのある方は、別に違法なことをしている訳ではありませんので積極的にアプローチしていくのもアリだと思います。
もっとも対応が面倒であれば直接的な営業は避けるのが無難かもしれません。
しかし現在付き合っている行政書士の対応などに不満を感じていて、新たな行政書士を探しているといった場合も往々にしてあります。
ですから例えばホームページなどで建設業許可業務をメインに仕事をしていることをアピールしておくことも、仕事を獲得する有効な手段といえるでしょう。
建設業者との人脈をつくりやすい
建設現場ではさまざまな業種の建設業者が出入りします。
そしてその経営者や職人さん同士のコミュニケーションもかなり密接です。
ですからどこかで一度きちんと実績をつくっておけば、その人脈から紹介などの口コミも期待でき、業務拡大の可能性が広がってきます。
ただし逆にいえば雑な仕事をしていると、そうした評判も広まってしまうことになります。
当たり前のことではありますがプロとして丁寧、迅速な仕事をするように心がけましょう。
実務を行うための参考情報が多いこと
建設業許可申請については、ほとんどの各都道府県から詳細な手引きが出ており、インターネットを使って手引きや書式をダウンロードすることができる場合もあります。
また建設業許可に関連する書籍も多く出版されていますので、基本的な案件についてはまず困ることはありません。
そして先述したとおり行政書士業務の中で最もポピュラーな仕事ですから、同じ支部の中に建設業許可申請を手掛けている先輩行政書士は必ずいます。
そうした先輩行政書士とよい関係を築いておけば、もし難しい案件に遭遇しても対応することができるようになるでしょう。
建設業許可から派生する業務も多い
建設業許可を取得している業者の中には、他にも様々な必要性を感じていることがあります。
例えば、入札参加業者となるための許可申請(経営事項審査申請)や、個人事業者からの法人化、あるいは『のれん分け』などに伴う新たな会社設立、産業廃棄物収集運搬業申請などです。
建設業許可申請の仕事から、様々な行政書士業務が派生してくる場合が多々あるのです。
このように建設業関連の業務を行うというのは事務所経営の安定化だけでなく、そこからの派生業務も多いので、行政書士にとってメリットが大きいといえます。
建設業許可申請の需要は本当にあるの?
一口に建設業といっても非常に多くの業種があります。
地域によって多少の差はあるかもしれませんが、新人行政書士でも入り込む余地、需要は十分にあると考えていいでしょう。
ちなみに私の事務所は相続や遺言といった業務がメインなので、建設業許可申請という文言などほとんどホームページや事務所案内、名刺にも載せていません。
しかし建設業者などはとにかく行政書士が申請書類の作成などを行っていることをよく知っているので、建設業関連の相談や依頼が舞い込んでくることもあるほどです。
建設業許可の有無は死活問題となることもある
原則として建設業許可を取得する必要がある業者というのは、500万円(税込)以上の工事を請け負う場合です。
しかし500万円以下の工事であっても、元請業者から建設業許可の取得を条件として求められるといったケースも多々あるのです。
そこでとにかく急いで行政書士に許可申請を依頼してくるということがあります。
仕事が受注できないというのは当然、建設業者にとって死活問題です。
ですから建設業許可関連をメインに行っていることをアピールして営業活動を行ったり、ホームページなどをうまく使えば、業務を数多く受注できる可能性は高くなるでしょう。
建設業許可関連は人気があるだけに注意点も
ただし業務の需要があることに間違いはありませんが、前述のとおり、行政書士業務の中で最も人気のある分野なので、おのずと様々な面で競合する事務所が多くなります。
もし建設業許可関係をメインに据えていくことを考えているのであれば、そうした点も十分に留意しておく必要があるでしょう。
また地域によってはダンピング競争も激しい分野なので『前の行政書士は○円だった』などと値引きを要求されることも多々あります。
ですからあらかじめ報酬額の根拠を明確に説明できるようにしておく必要があります。
要求された報酬額があまりにも市場価格、自分の事務所で決めている報酬額と大きな差があるような場合には、きっぱりと断る勇気も必要です。
ちなみに私は1円でも値下げを要求するような業者の依頼は一切受けません。
これは他の業務でも同様です。
値下げした価格は元に戻すことができません。
もし値下げした顧客から『あそこの行政書士は安い』などといった口コミが変に広がってしまうと、今後の仕事にも大きく影響してきてしまいます。
建設業許可関連の仕事は許認可申請業務の基本
建設業許可申請関連の仕事というのは、行政書士を名乗って何らかの営業活動などをしていれば、これから相談や申請業務を依頼される可能性は十分にあります。
前述の通り建設業関連業者というのは、行政書士が建設業許可関連の仕事を行っているということをよく知っているからです。
建設業許可申請というのは許認可申請業務のエッセンスが詰まっており、いわば許認可申請業務の基本とも言えます。
なお他の許認可申請業務に関しても同様ですが、申請要件や添付書類などが都道府県ごとに異なる、いわゆる『ローカル・ルール』というものがあります。
そうした情報については、都道府県の建設課に相談したり、建設業許可申請関連に詳しい先輩行政書士に相談してみるとよいでしょう。
建設業許可申請は意外な入口から依頼されることも
建設業許可申請業務をマスターすれば、他の許認可申請業務にも自信をもって取り組むことができるようになります。
これから建設業許可関連をメインに据えたいと考えている方はもちろん、他の業務分野をメインにしたい方であっても、せめて役所から出ている手引きなどは読み込んでおくことです。
どの分野を専門とするにしても、建設業許可申請に関してはせめて基本的なところだけでも一応勉強しておいた方がよいでしょう。
結構、意外なな入り口から依頼が入ってくる業務ですからね。


