これから行政書士で開業を考えている方や登録したばかりの新人行政書士の中には、果たして実務経験なしで仕事がやっていけるのか、といった不安を抱いている方がいるかもしれません。
そこで行政書士事務所で補助者やアルバイトとして、あるいは大きな事務所に入って実務経験を積んでから独立開業した方がいいのでは、という考えもあります。
確かに行政書士の仕事について右も左も分からないという状態で開業、ということに不安を感じる気持ちは分かります。
20年近く前の私もそうでしたから。
では実際に個人開業する行政書士は、事前に実務を経験しておいた方がいいのでしょうか。
ほとんどの行政書士は実務経験なしで開業している
少なくとも私の知る限りほとんどの個人開業行政書士は、まったく実務経験なしで開業して仕事をしています。
そして私自身も行政書士の実務経験なしでいきなり開業した一人です。
それでも20年近く行政書士として仕事をし続けてきています。
自己研鑽さえしっかり積んで準備しておけば何とかなる
こう言っては元も子もないのですが、最初から実務経験がなくても覚悟を決めてやれば何とかなる、というのが私の実感です。
というのも、ほとんどの行政書士業務は役所などから詳しい手引きが出ていますし、関連する書籍なども充実しています。
わざわざ実務経験を積むために補助者やアルバイトなどをやらなくても、自己研鑽をしっかりと行っていれば、いつ問い合わせがきても見込み客と対等に話ができるようになるでしょう。
また細かい点で分からないことがあれば先輩行政書士に聞いてみたり、役所に直接問い合わせるなどすれば、ほとんどの問題は解決します。
ということで行政書士として個人開業するにあたっては、経営者マインドをしっかり身につけるといった条件付きではありますが、実務経験がなくても問題はありません。
実務の知識を得ると同時にやっておくこと
行政書士の仕事においては、実務の知識を覚えると同時にやっておくことがあります。
それは信頼できる人脈の構築と営業力を鍛えることです。
同業者や他士業はもちろんですが、あらゆる方面の人脈を築いておくことで、実務経験がなくてもそれをカバーすることができます。
手っ取り早いのは同業者の得意分野をリサーチすること
そうした人脈を築く方法で一番手っ取り早いのは、まず所属する支部の集まりに参加して誰がどの分野に強いのか、といったことをしっかりリサーチしておくことです。
そういった先輩行政書士と懇意にしておくと、困った時に助け舟を出してくれることもありますし、実務上の細かい疑問点なども聞きやすくなります。
また人脈を構築していくとともに、仕事を得るための営業活動というのもやっていかなければなりません。
当たり前のことですが、仕事がなければ実務経験を積むことはできません。
ですから新人行政書士は自己研鑽に励みつつ優良な人脈を築き、自ら積極的に仕事を得るための営業活動というのが必要となってきます。


もちろん実務経験のない業務はなかなかスムーズにいかないところもあるでしょうし、業務を終えるまで時間がかかってしまうかもしれません。
だからこそ、いざというときのための優良な人脈形成が重要になってくるのです。
人脈を作ることも営業もできないなら廃業
もし人付き合いがどうしても苦手で人脈も築けない、営業活動することもできない、というのであればどうなるでしょう。
そういう方は残念ながら経営者としての資質がないと言わざるを得ませんので、もう廃業するしかありません。
行政書士という資格を掲げただけで仕事が集まるほど、世の中は甘くありませんので。
経営者としての資質がなければ容赦なく市場から淘汰される
よく行政書士で食えますか?などという質問を見聞きしますが、まず『行政書士で』食えるかどうか、という考え方自体がナンセンスです。
行政書士を廃業しなければならないような憂き目にあった人は、行政書士だから食えなかったのではなく、経営者としての資質がなかったというだけのことです。
資格の有無などまったく関係ありません。
行政書士であろうと司法書士であろうと、また弁護士であろうと、経営者としての能力がなければ容赦なく市場から淘汰されていきます。
逆に経営者マインドをしっかり身につけている人は、たとえ行政書士をはじめ士業という商売ではなくても必ず成功できます。
そうした点をまだ理解できていない、誤解している方が多いのは残念なことです。
実務経験を積むのは開業してからでも十分
経営者としての基盤を整えるための自己研鑽や人脈づくり、仕事を得るための営業活動をしっかり行っていれば、必ず行政書士としての仕事が入ってくるようになります。
そして未経験の仕事であっても、実務経験のなさをカバーする体制を整えておけば、実務ができるかどうかの不安など心配することもなくなるでしょう。
実務経験がないことを心配するよりもとにかく自己研鑽を積み、人脈をできるだけ広げてしっかり営業活動を行い、経営者としての資質を磨いていくことを考えていきましょう。
実務経験を積むのは開業してからでも十分できます。
多くの行政書士が儲かれば社会的ステータスも向上する
どうしても不安で実務経験を積みたいがために、補助者やアルバイト、行政書士の求人を探すのも悪くはありませんし否定もしません。
ただ一日でも早く経営者として儲けるための資質を高める努力をした方が、将来のためには何倍も役に立ちます。
一人でも多くの行政書士が成功することで、行政書士の社会的ステータスも高まります。
行政書士で食えるのか食えないか、などといった不毛でケチくさい話をしているより、まず経営者としての資質を磨き、実務をこなして稼ぐことに目を向けていきましょう。