行政書士が行っている業務やサービスというのは多々ありますが、『家系図作成』といったサービスを行っている行政書士事務所も数多くあります。
中にはこの家系図作成を専門に行っているような事務所もあり、マスコミにも取り上げられている行政書士もいるくらいですから、世の中のニーズはとても高いと考えられます。
自分自身のルーツであったり、ご先祖様のことを詳しく知りたいという方が意外と多いということなのでしょう。
戸籍で確認できる範囲にとどまらず、墓石や石碑などの拓本をとったり、過去帳などの古文書に記載されている内容をたどるなど、さらに古いご先祖を調査するサービスを行っている方もいます。
ではこの家系図作成は、行政書士が『業務』として受任できるものなのでしょうか。
家系図作成は行政書士業務ではありません
まず大前提として、単に自分のルーツを確認して家系図を作りたいといったように、いわゆる観賞用、記念用に作成する家系図の作成については、行政書士業務にはあたりません。
その根拠は観賞用、記念用に作成する家系図作成というのは、行政書士法に定められている『事実証明に関する文書』にはあたらないという日本行政書士会連合会の見解です。
つまり家系図作成については、行政書士業務としては受任することができません。
逆にいえば行政書士でなくても、家系図作成を行うサービスを業として行うことは可能ということになります(裁判においてもこの点は明示されています)。
なぜ家系図作成を手掛ける行政書士が多いのか
ではなぜ家系図作成を手掛ける行政書士が多いのかというと、ズバリ『国家資格者』としての信用があるからです。
家系図を作成するにあたっては、まず戸籍といった個人情報を入手することから始まります。
戸籍というのは重要な個人情報が記載されているものです。
そのため法律で厳しい守秘義務などが課せられている国家資格者の行政書士であれば、依頼者も安心できるという点がまずあげられます。
良し悪しは別として、家系図作成を行っている業者の中には『戸籍の収集や確認などは国家資格者の行政書士が行います』というような宣伝を行っているところも実際にあります。
また特に相続関連の業務を手掛けている行政書士は、古い戸籍などを読み解くことにも慣れているということもあり、この家系図作成を行っているということもあるでしょう。
行政書士業務ではない戸籍の取得はどのように行うのか
行政書士をはじめとする士業は『職務上請求書』というものを使い、職権で業務に必要な依頼者の戸籍や住民票といった書類を役所に請求することができます。
しかし先の行政書士会連合会の見解通り、観賞用や記念用としての目的で家系図を作成するような場合、これは行政書士の業務ではありませんので職務上請求書を使うことはできません。
ではどのような方法で戸籍を取得するのかというと、依頼者本人に委任状を書いてもらって請求することになります。
戸籍を取得できるのは、原則として同一の戸籍に記載されている本人や直系尊属、直系卑属(直系の親族)といった人のみです。
しかしこの委任状を使えば、基本的に誰でも本人の代理人として戸籍を請求できるのです。
虚偽の目的で職務上請求書を使用すると大変なことになります
なお家系図の作成依頼にもかかわらず、相続関係説明図や遺産分割協議書作成のため、などといった『虚偽の』使用目的で職務上請求書で戸籍を取得している一部の行政書士もいます。
これは相当に悪質な行為となりますので、発覚すれば当然のことながら懲戒処分といった重いペナルティが科せられることになります。
昨今は職務上請求書の不正使用が相次いでおり、チェックもかなり厳しくなっています。
虚偽の申請はすぐにバレますのでくれぐれも注意してください。
もし行政書士が家系図作成を手掛けるのであれば
繰り返しになりますが、いわゆる家系図作成というのは行政書士の業務ではありません。
あくまでも行政書士という国家資格者の信用を使ったサービスです。
間違っても職務上請求書の目的欄に『家系図作成のため』などと記入して請求するようなことがないようにしましょう(もっとも、請求する際に役所から指摘があるとは思いますが)。
プロとして恥ずかしい思いをしますので。
また先述のように、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成など虚偽の使用目的で職務上請求書を使うなどといったことは論外です。
後に行政書士会から呼び出されて厳しいお叱りを受けるだけでなく、懲戒処分などを受ける可能性が極めて高い悪質な行為です。くれぐれも注意しましょう。
きちんとルールを守っていれば面白いビジネス展開ができるかも?
もし家系図作成業者とタイアップして仕事をするような場合には、個人情報の漏えいなど重大な問題があった場合の責任の所在などを、書面ではっきりしておくことも重要です。
行政書士は予防法務の専門家でもありますから、そのくらいのことは当然といえます。
このようにいわゆる家系図作成については、色々と注意しなければならない点が多々あります。
しかし古文書を読めるような方や読むことに興味があるような方は、顧客サービスのひとつとして行ってみるのもビジネスとしては面白いかもしれません。
行政書士業務以外で儲けるのも経営戦略としてはアリ
行政書士だからといって、行政書士以外のビジネスを手掛けることは何ら問題ありません。
別に行政書士業務以外の仕事であっても、経営者が事業収益活動のひとつとして利益が見込めれば積極的に取り組んでいくのも経営戦略としてはアリでしょう。
もっとも必ずうまくいくという保証はありませんが。
まあやり方次第では、収益の柱として確立できる?ビジネスかもしれませんね。