モノを売る商売ではない行政書士の仕事というのは、仕事の内容や動きが顧客に分かりにくい商売と言えます。
たった1枚の書類を作成したり取得するだけであっても、かなりの手間や時間を費やすことは珍しくありません。
それだけに、どこにどれくらいの手間や時間がかかってなぜこの料金なのかといった点を顧客に十分説明し、納得してもらう必要があります。
顧客にとって仕事の内容以上に気になるのは料金です。
いくらかかるのかが分からなければ依頼もできないからです。
では行政書士の仕事に対する料金(報酬)というのは、どのように考えていけばいいのでしょうか。
ダンピング競争は自らの身を滅ぼす
行政書士の報酬は一応の世間相場や参考報酬額というものはありますが、基本的にそれぞれの事務所で自由に設定してよいことになっています。
しかしこの料金設定というのは最初から慎重に検討しないと、後々の経営にまで大きく響いてきてしまいます。
どのように料金を設定するのかは確かに自由です。
ただ経営という観点から考えると価格競争のダンピング合戦に出るよりも、いかに付加価値をつけて単価を引き上げるか、という方向にシフトするべきです。
忙しいのに儲からない負のスパイラル~こうして会社は倒産する
勘違いしている人も多いのですが、例えば経営に苦しんでいる会社の中で仕事がなくて困っているところというのはごく一部だけです。
倒産する企業の多くは仕事はあって忙しいのに儲けが出ず、それでも目の前の支払いのために同じ仕事をし続けなければならないという、いわば負のスパイラルに陥ってしまった結果です。
つまり最終的に倒産する会社というのは、赤字の仕事をし続けたことが破綻の原因なのです。
行政書士の仕事もダンピング合戦になれば、こうした負のスパイラルに巻き込まれていくことになります。
売上よりも利益を重視した経営を目指す
そしてダンピング合戦に勝って(勝つという表現はおかしいのですが)、仮に仕事を大量に受注できたとしても売上は上がりますが利益は出ません。
利益を上げていくためには顧客に対して付加価値を提供し、逆に単価を引き上げることができないかといった点を追求していかなければならないのです。
見かけの売上よりも利益を重視した経営を目指すべきであり、それが経営感覚というものです。
こうした経営感覚を磨くには、案件ごとにしっかりとした見積もりを行ったうえで精算表をつくり、売上と利益、実際に投入した時間を見直してみることが大事です。
数字を意識する経営感覚を身につけること
数字を意識すると様々なことに気づくことができます。
例えば単価の大きな仕事であっても、実は資料代や交通費などがかかっていて意外に利益になっていない、また打ち合わせが何度も必要で、実は時間コストがかかっているなどといったことです。
自分の感覚と実際にかかっているコストに差があることに気づくには、やはりしっかり数字で見なければわかりません。
単に他の事務所がこれくらいでやってるから、というだけで料金設定するのではなく、最初から利益という数字を意識して自分の事務所の料金を設定していくことが重要です。
そうしないと忙しくても赤字の仕事を続けなければならず利益が出ないという、倒産する会社と同じ構図の経営に陥ってしまう恐れがあります。
士業が儲からないというのは経営感覚が乏しいから?
経営感覚というのは一朝一夕で身につくものではありませんが、売上よりも利益という数字を意識するだけでも大きく違ってきます。
特に士業というのは、なまじ資格依存体質があるためか経営感覚に鈍感な方がまだまだ多い、というのを実感しています。
これから開業する方や開業間もない方は、単に受注できた仕事を漫然とこなすだけでなく、実際の利益、数字というものを意識して経営感覚を磨いていきましょう。