行政書士は官公署に提出する書類作成の代行、提出を業として行うことができます。
もちろん生活保護申請の書類作成や提出代行も業として行うことが可能です。
この分野を専門に行っている事務所もあるくらいですから、この業務の需要は相当にあると考えてよいでしょう。
申請のノウハウも豊富にお持ちなのだと思います。
ただあくまで私の個人的な考え方ですが、この業務を積極的に受任することについては、正直なところ気が乗らないところがあるのです。
生活保護申請を個人的に受任したくない理由は?
実際、私の事務所にも生活保護申請についての問い合わせが時々あります。
しかし基本的には受任まで至ることはまずありません(見積もりの報酬額が他よりたぶんかなり高いので)。
それには主に次のような理由があります。
行政書士に報酬を支払うのであれば生活費に回した方がよいのでは?
そもそも行政書士に相談(無料で受けるのであれば別ですが)したり、申請書の作成や提出代行を依頼するお金があるのであれば、その分を当面の生活費に回した方がよいと思うのです。
インターネットなどでざっと報酬額を調べてみると、1万円から5万円ほどの報酬額設定にしている事務所が多いようです。
この報酬額はこれから生活保護を受けようと考えている方にとって、かなりの大金であるはずです。この報酬を払ってまで依頼する必要性があまり感じられないのですね。
専門家に依頼するほど難しい手続きではない?
この業務を受任したことのない私がいうのも何ですが、生活保護申請は専門家に依頼して作成してもらうほど難しい手続きではないと思います。
そして行政書士に依頼して作成してもらったとしても、それで必ず申請が通る、通りやすいということもありません。
むしろ自分で申請している方が大多数でしょうし、分からないところがあれば福祉事務所などに問い合わせれば詳しく説明してくれるはずですしね。
まあ無料で相談を行っている、とてもボランティア精神旺盛な行政書士事務所に相談してみるのはアリかもしれませんが。
事務所として利益につなる仕事ではない?
何より1万円なり5万円といった低単価が相場という点がネックです。
業務として責任をもって受ける以上、依頼者からの詳細なヒアリングや生活状況の調査なども当然必要でしょう。
プロとしては調査不足で虚偽の申請なんてできないですからね。
そうした手間や時間コストを考慮すると、この報酬額ではとても採算がとれません。
ということで事務所経営という観点からみても、その労力と報酬額を考えると正直なところ『割に合わない』仕事かな、と言わざるを得ないのです。
生活保護申請を代行する事務所を否定するわけではありませんが
行政書士の業務としては申請書類の作成と提出代行ということになりますが、もし申請が通らなければ返金、というところも多いですね。
それであれば無料相談やサポートが受けられる法テラスや関連のNPOなどといったところを最初から利用するのが一番よいのではないかなと思います。
もちろんこの業務を行っている事務所を決して否定するつもりはありませんし、依頼する方の自由ではあります。
しかし結局は本人への聞き取りや財産状況の調査、扶養義務のある親族への確認といったことは役所がきっちり行うわけです。
低単価かつ市区町村の裁量で受給可否が決まるという不確定要素が強い業務というのは、やはり事務所経営という観点からは積極的に受任したくないな、というのが私の率直な気持ちです。
感情的な部分でも報酬をいただくことに気乗りしない
また感情的な部分としても、これから生活保護を受給しなければ生活できない、という方から報酬をいただくというのは、やはりどうしても気乗りしない要因のひとつでもあります。
社会貢献という観点で考えれば、採算度外視で取り組むことも否定はしません。そういった高い志をもって仕事に取り組んでいる方は素晴らしいとは思います。
しかしまだ十分な売上を出せていない新人行政書士の場合は熟考する必要があります、
最初から社会貢献的な業務に積極的に取り組むよりも、まずは利益を出せる仕事ができるようになることの方が重要です。
もっともきっちりと事業として利益につながる見込みがあるのであれば、積極的に取り組んでもよいとは思います。
そこはご自身の経営判断で。


