行政書士の業務範囲はとても広く、どのような仕事が現実的にあるのか、今ひとつ分かりにくい面があります。
業務範囲が広いことはメリットにもなるのですが、逆に行政書士の仕事を一般の人が理解しにくいというデメリットも併せ持っています。
他士業とは違って一口では説明が難しいのですね。
では行政書士は実際にどのような業務があるのでしょうか。
行政書士の仕事は様々なものがありますが、まず大きくは『許認可系』と『法務系』の2つに分けることができます。
行政書士の独占業務~許認可系の業務について
許認可系の業務は、建設業許可や一般貨物運送業許可、産業廃棄物処理業許可等の申請書類の作成と提出、外国人の在留資格取得許可に関する申請取次、これらの業務に付随する相談や調査などです。
その他にも、接待飲食業営業許可、道路使用許可、風俗営業許可、古物営業許可など、いわゆる官公署に提出する書類作成の多くは行政書士の業務になります。
私は実際に数えたことがありませんが、行政書士が業として行うことができるのは数千種類とも一万種類とも言われています。
なおこれらの許認可系の業務の多くは、行政書士のいわゆる『独占業務』です。基本的に他士業が業として行うことはできません。
特に建設業関連の業務は需要も高く継続性のある分野であり、多くの行政書士事務所の主力業務ともなっています。
法務系の業務について~業際には要注意
法務系の業務とは、定款や議事録の作成、契約書の作成、離婚協議書の作成、内容証明の作成、示談書作成、およびこれらの業務に付随する相談や調査などです。
その他にも遺言書原案作成、遺産分割協議書作成、規約の作成、告訴・告発状の作成など多くの業務があります。
法務系業務の特徴としては、他士業と業務範囲が重なるものが多いことです。
つまり他の行政書士だけでなく、他士業とも競合するということになります。
法務系業務は許認可系とは異なり、行政書士の独占業務はほとんどありません。
そのため他士業との『業際』という問題も絡みやすいのが特徴でもあります。




行政書士業務は書類作成だけではありません
行政書士というと、文字通り書類作成の専門家というイメージが強いと思います。
しかし許認可系であればどのような書類を作成、添付し、どのような内容を書けば申請がきちんと通るのかをしっかりと考慮しなければなりません。
また法務系であれば、どのような方向性で依頼者に動いてもらうかといったアドバイスをし、必要があれば書類を作成して問題解決をサポートすることになります。
コンサルティング的能力を高めていくことが生き残りのカギ
つまりどちらにしても書類作成だけではない、コンサルティング的能力が求められるのです。
顧客は、そうした知識やノウハウが乏しいからこそプロの行政書士に依頼するのですから、単に書類の作成方法を知っているというだけでは、専門家としての役割を十分果たせないのです。
特に法務系の業務については他士業とも競合することになります。なおさらコンサルティング的能力や付加価値がないと、差別化という点でも不利になってくるでしょう。
どのような業務を行っていくにしても、やはり経験や実績を積み重ねていくことが大事です。そうした中で、自然とコンサルティング能力もどんどん養われていきます。
高い専門性を身につけて価格競争とは無縁の仕事を
他と同じようなサービスを提供しているだけでは、見込み客は安い方へどんどん流れていきます。これは市場原理としては当然のことです。
結果として不毛な価格競争に巻き込まれて負のスパイラルに突入するか、仕事が入らなくなって廃業してしまうか、いずれにしてもいつかは市場から淘汰されていきます。
真の専門家となれるよう自己研鑽に励み、行政書士ならではのサービスや差別化、付加価値を追求していきましょう。
本当に優良な見込み客というのは、そうした点をきちんと見抜いてくれるものです。