行政書士の業務内容は多岐にわたりますが、中でも法務分野(相続や離婚関連など)をメイン業務として考えている方も多いと思います。
ちょっとインターネットで検索すればすぐに分かりますが、相続や離婚関連の業務を行っている行政書士事務所は数えきれないほど存在します。
こうした分野の相談というのは世の中の需要が非常に高いことは確かです。行政書士業務として関わることができる部分も多々あります。
ただ相談内容や業務内容によっては、いわゆる業際に引っかかるケースが非常に多い分野であることも頭に入れておかなければなりません。
そもそも業際とは?
業際というのは、簡単に言えば『士業間の縄張りの境界線』のことです。
行政書士ならば許認可申請などの書類作成等、税理士であれば税務関連、司法書士であれば登記に関することなど、それぞれの士業には独占業務というのがあります。
ところが法務分野の業務については、その多くが行政書士の独占業務ではありません。
そのため知ってか知らずか業際を踏み越えてしまい、大きな問題になることも多々あるのです。
行政書士法と弁護士法は業際問題で抵触しやすい
行政書士事務所の中には、ただ漠然と『相続問題』『離婚問題』といった業務内容を掲げているところも少なくありません。
しかしこうした表現は相談者に誤解を招きかねないですし、何より業際問題に引っかかる可能性が高くなります。
なぜなら相続問題であったり離婚問題に関する相談というのは、いわゆる『法律事件』に該当する内容が含まれていることが多く、弁護士法72条に抵触する恐れがあるからです。
行政書士法をよく読み込んでいる方はきちんと理解していると思いますが、行政書士は弁護士法で言うところの法律事件に該当する相談や依頼を受けることはできません。
つまり『相続問題』『離婚問題』といった漠然とした表現は問題があるということになります。
相談者や依頼者に誤解を招く恐れがあるうえに、安易にトラブルに関する相談や依頼を受けてしまうと、いわゆる『非弁行為』となってしまう可能性が高くなるのです。
もちろんメイン業務として考えているからには、一般論として行政書士業務以外の関連知識も勉強しておく必要はあります。
しかし行政書士が業として行える部分と、業際をまたいでしまう部分は明確にしておかないと、知らず知らずのうちに違法行為となってしまうことがありますので注意が必要です。
他士業とのつながりを構築して業際問題を防ぐ
これから法務分野をメイン業務として考えている方は、まず弁護士をはじめ他士業とのパイプをきちんと構築しておく必要があります。
そうして他士業との関係をきちんと築いて相談できる体制を整えておけば、業際で問題が起こることを防ぐことにもつながります。
法律で業際というのが存在する以上、他士業との連携、関係の構築というのは必須なのです。
行政書士が業として行える部分だけでも十分な利益を出すことは可能ですし、わざわざ業際をまたぐリスクを負う必要はありません。
他士業との良好な関係というのは、業際の問題以外にもメリットが多々あります。
新人行政書士の方は自分の身は自分で守るという意識をもち、安心して仕事ができる環境を整えていきましょう。