行政書士の仕事というのは、一般の人には分かりにくいものです。
また顧客からは自分の仕事内容が見えにくい面もあります。
ですから仕事を依頼されて業務に着手する前に、顧客に対して十分な説明と理解を得ておくこと、きちんと報酬が支払われるようにすることが肝心になってきます。
これを怠ると顧客との深刻なトラブルだけでなく、今後の仕事にも影響が出ることにもなりかねません。
まずは以下のような点を常に心がけておきましょう。
業務範囲、期限、料金を明確にする
依頼を引き受ける際には、まず行政書士の業務範囲、期限、料金を明確に説明・納得してもらわなければなりません。
行政書士の業務範囲を理解してもらう
事前に自分の仕事を顧客にわかりやすく説明し、どこからどこまでを業務として行うのかを確認しましょう。
事前に業務範囲を説明せず、仕事を始めた後になってから『行政書士の業務範囲はここまでなので、その仕事はできません』などというのは、トラブルの原因になります。
またいわゆる『業際』にも注意しなければなりません。
できれば行政書士の業務範囲をきちんと説明した上で、その他の専門家が必要であるならば、信頼できる専門家を自分が紹介できるようにしておくのがベターです。
業務内容の期限を示すこと
ビジネスにおいて、期限を明確にしないで受注するというのはまずあり得ません。
業務に着手する前でもおおよその期間はわかるはずです。
話の中で顧客の希望と隔たりがあるような場合には、きちんと根拠を示して理解を得ておくことが重要です。
特に許認可申請などは実際に許認可がおりるまで時間を要するものが多いものです。そういった点もきちんと説明し理解をしてもらいましょう。
業務内容によっては期限の問題をはっきりしておかないと、場合によっては損害賠償請求されてしまうこともあります。事前にしっかり確認しておく必要があるでしょう。
料金(行政書士報酬額)について
お金の問題となる料金は、顧客との間で最もトラブルが生じやすいと言えます。
例えば自分がレストランに入って500円のカレーを注文した後に、店から『やっぱり料金が千円に上がりました』などと言われたら、とても納得できないでしょう。
行政書士の仕事においても、この料金は特に注意しなければなりません。
料金はケース・バイ・ケースで請求させていただきます、という説明も絶対にNGです。
顧客に納得してもらうためには、やはり料金は明確に示さなければなりません。
まして数十万円単位の大きな業務であればなおさらです。
事前に綿密な見積もりを行ったうえで料金の根拠を示し、顧客に十分説明・納得してもらうことが大切です。
新人行政書士に限りませんが、適正な見積もり額を決めるために一度事務所に持ち帰らせてもらい、正確な見積もり額を出すようにしましょう。
さらにトラブルを防止するために行っておくこと
業務範囲、期限、料金の3点は、とにかく業務の着手前に顧客へ伝えることが重要です。
口頭で説明して条件を納得してもらったら、その後に詳細をメールで送っておくことを徹底しましょう。口頭での説明のみでは、後に言った言わないの水掛け論となるおそれもあります。
また業務範囲や期限、料金について顧客としっかり合意できたのであれば、行政書士業務委託契約書を必ず締結します。
こうした点はビジネスにおいては常識なのですが、法律専門職という特殊な仕事であるがゆえに、つい怠りがちな部分でもあります。
何より行政書士は書類作成の専門家です。
この程度の書類を作成できない、きちんと文書で契約を結んでいないなどといったことでは、専門家としてお話しになりません。
新人行政書士のうちは、この仕事がどれくらいの料金でどのくらいの時間がかかるのか、といった点を明確に伝えるのは少し難しいかもしれません。
しかし少なくとも自分の専門分野として掲げている業務については、事前に仕事の内容をきちんと理解しておき、しっかり顧客に説明できるようにしておきましょう。