新人でもベテランであっても、人間ですから業務上のミスというのは付き物です。
簡単にカバーできるようなミスであればともかく、行政書士を信頼して業務を依頼していたにもかかわらず、致命的な損害を顧客に与えてしまうようなこともないとは限りません。
場合によっては依頼された会社はもちろん、そこで働いている従業員といった人々にまで影響が及ぶ可能性もあるのです。
たとえ自分がミスをしなかったとしても、補助者などがミスを犯してしまうリスクも考えられるでしょう。
そこで考えたいのは『行政書士賠償責任補償制度』への加入です。
行政書士賠償責任補償制度とは?
行政書士賠償責任補償制度というのは、簡単にいえば、行政書士のミスで顧客に損害を与えてしまったような場合に、その損害を補償してくれるものです。
つまり保険ですね。
本来、専門職であるプロの行政書士であれば致命的なミスは許されないことです。
しかしプロである行政書士であっても、100%ミスを犯さないとは限りません。
先にも述べた通り、致命的なミスを犯してしまったことで、顧客に甚大な損害が生じる可能性もあるのです。
もし数千万、億単位の損害が生じてしまうようなことがあれば、よほど大きな事務所でない限り、普通の行政書士事務所が損害を自腹で賠償することなどできません。
自分では完璧に要件を揃えて仕上げたと思っていても、最終的に判断するのは役所などです。絶対に大丈夫ということはないということですね。
そういった意味では、新人行政書士であればなおさら行政書士賠償責任補償制度には加入しておくべきといえるでしょう。
どのようなケースで行政書士賠償責任補償制度が適用される?
まず前提として、行政書士賠償責任補償制度で補償を受けるには、主に次のような要件が必要となります。
- 行政書士業務に該当するか
- 免責事項ではないか
これは当然のことではありますが、行政書士業務の中で発生した損害が対象であり、免責事項ではないことが条件です。
正式な業務依頼があったのかどうか
これはつまり、業務を依頼するにあたって互いの合意があったかどうかということです。
具体的には、行政書士業務委託契約書などの書面を取り交わしていたかどうかです。
メールのやり取りなどでも考慮されることもあるようですが、予防法務のプロでもある行政書士であれば、行政書士業務委託契約書といった書面は必ず取り交わしておくべきでしょう。
賠償額の算定について
賠償額は、まず顧客から請求されてからの算定となります。
この請求は裁判上の請求に限らず、書面や口頭であっても可能です。ただ、具体的な損害賠償額については保険会社では行いません。
賠償額については、損害を受けた側に具体的にどのくらいの損害が生じたのかといった客観的資料を出してもらう必要があります。
ただし、行政書士報酬の返還については、保険適用の対象にはなりません。
保険は使わないに越したことはありませんが
繰り返しになるようですが、プロの行政書士も人間ですから、絶対にミスのない仕事ができるとは限りません。
私自身は開業して20年近く経ちますが、幸いにしてこの行政書士賠償責任補償制度を使ったことはありません。
しかし、今後何があるか分かりません。
リスク回避策としても安心して仕事ができる環境をつくるためにも、やはり加入しておくことは必要かと思います。
こうした保険など使わないに越したことはありませんが、行政書士の仕事というのは絶対に大丈夫ということはありません。
万が一の備えというのは、事務所を運営していくうえでも大事なことです。
仮に補助者などが致命的なミスを犯してしまったとしても、『私は知りませんでした』などといった言い訳は経営者として通りませんので。