行政書士として賃貸オフィスを探す際は、まず毎月の家賃を支払っていけるかどうかはもちろん、あらかじめ予算を決め、物件に求める条件の優先順位を見極めることが大切です。
例えばいくつかのオフィスが入っている物件などでは、日当たりの良し悪しで家賃が異なっている場合があります。
確かに日当たりが良い方が気分はいいかもしれませんが、それによって売り上げが伸びたり、顧客の満足度が上がるわけではありません。
通常のオフィスは日中も電気をつけているところがほとんどですし、多少日当たりが悪くても問題が生じることはまずありません。
ですからそうした点は優先順位が低くなります。
このような点を十分に考慮しながら、月々のコストに見合った良い物件を探していくのが第一のポイントです。
その他オフィス選びのチェックポイント
また予算や優先順位を加味したうえで、以下のような点もチェックしておきましょう。
想定している顧客予備軍がエリア内にどれくらいいるか
例えば自分が外国人関係の業務を中心に行っていきたいと考えていても、事務所を構えるエリアに外国人がまったくいなければ、業務の依頼はあまり期待できません。
地域に外国人が少なくても営業方法を工夫することでカバーできる部分はありますが、やはりターゲット層となる見込み客が多いに越したことはありません。
事務所の商圏でどのような業務が見込めるのか、競合する事務所はどれくらいあるのか、などといったマーケティングは基本中の基本です。
また見込み客が行政書士事務所を探す際に、意外と多いのは『事務所が近かったから』ということも結構あります。
自分が想定している業務の顧客予備軍がいるかどうかも、できる限りチェックしておきましょう。
事務所を構える地名はエリア内でよく知られているか
事務所の地名というのも実は軽視できないポイントです。
その地名がよくにぎわっている、市区町村の中でも有名な地名であれば、それだけで信頼度がアップする効果が期待できます。
ただしこれはあくまでも地名のイメージだけでOKです。事務所周辺が実際ににぎわっていなくても構いません。
見込み売上や現状から逆算した予算をオーバーしていないか
せっかく好条件の場所に事務所を構えても肝心の売上や逆算した予算をオーバーしてしまっては、すぐに事務所を畳まざるを得なくなってしまいます。
あまり背伸びをせず、現状で無理のない物件を探すことが基本です。
最初に意気込んで高い物件に入居したものの、思ったような売上が出ずにすぐ安いところに移転、というケースは結構多いのです。
家賃に見合う売上見込みがあるかどうか
人通りも多くわかりやすい場所に事務所を構えても、肝心の家賃に見合うだけの売上がなければ経営は成り立ちません。
交通アクセスなどのよい物件であることに越したことはありませんが事務所家賃は多くの場合、最も大きな固定費になります。その点は十分検討する必要があります。
自分の想定している業務内容に照らし合わせて、家賃に見合うだけの費用対効果が期待できる場所を探しましょう。
インターネット環境に不便はないか
古いオフィスビルなどでは光ファイバーなどインターネット環境が整っていない、あるいは回線そのものが引けないようなところもあります。
また仮に回線が引けたとしても、建物や設備の老朽化などの要因から通信速度が極端に遅くなることもあるでしょう。
快適なインターネット環境というのは今の行政書士が仕事をしていく上で不可欠です。こうした点もしっかりチェックしておきましょう。
オフィス機器が使用できるだけの電力が供給されているか
特に複合コピー機など大型のものは、十分な電力が供給されていないと設置できません。
小型のものであれば設置可能かもしれませんが、行政書士の仕事は基本的に書類の作成が中心ですから、想像以上に多くの印刷やコピーが必要になります。
借りてからこうした点に問題が出ると困りますので、ここも事前に確認しておきましょう。
最寄り駅からのアクセス
相談者が電車やバスを使って来所するような場合を考えると、やはり交通のアクセスという点もできるだけ考慮した方がいいでしょう。
もっとも主力としたい業務が法人などを対象とするものであれば、基本的にはこちらから出向くことがほとんどです。
そのような場合には、あえて郊外で安い物件を探すというのも手です。
同じ建物に怪しげな会社や人が入居していないか
これはなかなか外見でわかりにくい部分もありますが、いかにもという雰囲気の場所も中にはあります。
行政書士も客商売ですからあまりにも雰囲気の悪い、いかにも怪しげな物件は安くても避けた方がいいでしょう。
収納スペースが十分にあるか
これは意外と盲点になりがちなのですが、収納スペースの有無はとても大事です。
行政書士として実際に仕事をしていくと、想像以上に書類などが大量にたまっていきます。
スキャンしてデジタルデータで保管、という手法も考えられますが、書類として保存すべき年数が法律で定められているものもあります。
そうした点を考慮すると、やはりある程度の収納スペースは必須でしょう。
大きな書庫などが置ければカバーできるかもしれません。しかしそのようなスペースが確保できるような広い物件だと、当然家賃も高くなります。
建物の外観もチェックする
この点は見た目ですぐに判断できると思います。
行政書士も客商売ですから、あまりにも古いさびれたアパートのような物件はできれば避けた方がよいでしょう。
予算との兼ね合いもあるとは思いますが、やはりある程度は事務所としてふさわしい外観の方が、顧客の安心感にもつながってきます。
新築とまでは言いませんが、できるだけ事務所らしい物件を選ぶようにしましょう。
事務所を維持するという緊張感も大切
事務所を借りるということは、毎月必ず家賃が固定費として出ていくことになります。
また契約更新時の費用であったり、保険料や光熱費といった必要経費、維持費も当然考慮しなければなりません。
ただ事務所としての信用度は自宅事務所よりも格段にアップしますし、通勤という時間があれば気持ちを仕事モードに切り替えることができます。
そして何より仕事をして事務所を維持していかなければという気概や緊張感という点も、業務を行ううえではプラスに働きます。
新人行政書士が事務所を維持するのは大変なことですが、良い物件があればそれを補って余りあるメリットもあるのです。
自宅事務所から賃貸オフィスに移転を考えている方や開業時から賃貸オフィスにする方も、借りてから後悔することがないよう、よくよく検討したうえで物件チェックをしていきましょう。