行政書士の仕事の中には、断った方が後々自分にとって利益になる仕事もあります。
しかし新人行政書士のうちはとにかく業務を行いたい一心で何でも引き受けてしまい、それが結果として利益にならない、といったことも少なくありません。
新人行政書士は来た仕事は何でもやる、というのを基本スタンスにすべきです。
しかしこれはもちろん自分の利益になる、経験として今後に生かせるものである、というのが大前提です。
では具体的にどのような仕事、依頼が要注意なのでしょうか。
依頼を断った方がよい仕事とは?
新人行政書士のうちは、このあたりの判断がなかなか難しいところもありますし一概には言えないところもあります。
そうしたことを踏まえて下記のような場合は少し注意した方がいいでしょう。
着手金などの金払いが悪い顧客
これは様々なケースがありますが、例えば顧客が着手金を払わないというような場合です。
着手金というのは通常、報酬額にもよりますが料金の半額程度を先にもらうのが一般的です。ただこれを支払わないような顧客は要注意です。
着手金を受け取っていれば、後に残りの料金を支払わない、あるいは値下げを要求されるようなことがあっても、その金額分の仕事だけを行うという対抗手段がとれます。
しかし着手金をもらっていない場合には、相手の方が必然的に有利な立場になってしまいます。必ず着手金をもらうか、料金を先払いにするようにしましょう。
とにかく細かい仕事ばかりをもってくる顧客
例えば大きな案件は他の事務所に頼み、その他の細かい案件ばかりをもってくるような顧客も、後のことを考えれば思い切って断った方がいい場合もあります。
その後に大きな仕事が舞い込んできたときに、その細かい仕事のために断らざるを得ない、という可能性もあります。これは非常にもったいないことです。
行政書士としてステップアップするためにも、このような仕事は積極的に行わない方が無難です。
ただし細かい仕事であっても、これから新しい分野を手掛けようとする場合や、とにかく実績を作りたいようなときは引き受ける価値はあるでしょう。
あるいは小さな仕事をルーチンワーク化してこなせる仕組みを作れるのであれば、あえて引き受けた方がよいこともあります。つまりケースバイケースで決めるということです。
特に新人行政書士の場合は最初の実績づくりや経験が大切ですから、慎重に検討しましょう。
何やら怪しげな仕事が多い顧客
法に反するような仕事はもちろん論外ですが、限りなく黒に近いグレーな(と思われる)仕事をもってくる顧客も中にはいます。
当たり前のことではありますが、法を遵守しなければならない行政書士として、こうした仕事はきっぱり断りましょう。
忙しくても引き受けた方がよい仕事もある
断った方がよい仕事とは逆に、忙しくても積極的に引き受けた方がよい仕事もあります。
きっちり料金を支払ってくれる顧客
金払いが悪い顧客とは対照的に、請求した料金をきっちりと支払ってくれる優良顧客は大事にすべきです。
行政書士事務所の経営は、当然お金を払ってもらわないと回っていきません。
きっちり料金を支払ってくれる優良顧客に対しては、迅速かつ質の高いサービスを提供することで信用度も増していきます。
大きな仕事をもってきてくれる顧客
行政書士として大きくステップアップするには、ある程度大きな案件を手掛けることも必要です。
こうした仕事をもってきてくれる顧客は大事にしましょう。
ただし大きな仕事をもってきてくれる顧客であっても注意すべき点はあります。
例えば他の行政書士や他士業などとトラブルになった前歴がある場合や、実費や時間が多大にかかる場合など、手離れの悪い仕事については遠ざけた方がよいこともあります。
また行政書士としての実力を磨くためには、多少背伸びしてでも仕事を受注することは必要です。
しかし自分の実力をはるかに超えるような仕事については注意しなければなりません。
もし仕事を途中で投げ出すようなことになれば、自分自身の信用が地に落ちてしまいます。
その後の仕事にも影響しますので、ここは慎重な検討が必要です。
そのようなことにならないためにも、日ごろからの自己研鑽が大切になってきます。
クリーンな仕事をもってきてくれる顧客
当然のことながら、行政書士は違法行為の片棒を担ぐようなことがあってはなりません。
特に新人行政書士は様々なところから狙われやすいので、もし心配な点があれば先輩行政書士などに相談してみましょう。
行政書士はコンプライアンス重視のしっかりした顧客との付き合いが重要です。
日ごろからの自己研鑽を怠らないこと
行政書士としてお金をきちんともらうためには、顧客をよく観察し、見極める目を養うことが大切です。経験を積んでくると、こうした点は自然と身につくものです。
もちろん、実務知識などを身につけるための自己研鑽も重要です。
経験や実績の乏しい新人行政書士が仕事をとるには、まず実務知識をしっかり勉強しておくことは当たり前の準備といえるでしょう。
しかし新人行政書士のうちは、顧客との関係で多少の失敗をしてしまうこともあります。
行政書士を続けられないくらいの致命的な失敗は困りますが、多少の失敗であれば今後の糧にもなっていきます。
ここはある程度経験を積んでいかないと判断しにくい部分は確かにあります。
ただ行政書士としてステップアップするためには、多少の失敗を恐れずにチャレンジできるための自己研鑽を怠らないようにしましょう。