行政書士はいわゆる『一人行政書士』として開業するケースがほとんどです。
そうなると行政書士としての仕事はもちろん、事務所経営の何から何まで自分だけでこなしていかなければなりません。
まだ仕事をやり始めたばかりの新人行政書士であれば、それでも何とか事務所を運営していくことはできるでしょう。
しかし事業として行政書士事務所の経営を正しい方向性で行っていけば、やがて一人ではすべてをこなすことはまず困難になってきます。
そこで考えなければならないのは、自分でなくてもできる仕事はできる限り減らしていくという方向性も実践することです。
時間は有限である以上、利益をあげるためには他力を使っていくことも視野に入れていかなければなりません。
ベテランでも意外と多い~自分で何でもやっている人
事業として行政書士事務所を経営していくのであれば、開業から右肩上がりで売上を伸ばしていくことに注力すべきです。
ところが行政書士はベテランでも一人事務所が多いためか、忙しくしている割には『限界点』あたりで仕事をしている方も少なくありません。
限界点ということは、それ以上利益を伸ばしていくのは難しいということになります。
一般的に行政書士は稼げない、儲からないといわゆる要因というのは、そこがボトルネックとなっているからといえます。
行政書士も経営者としての感覚をしっかり身につけることが大事
あくまでも一般的論ですが、一人行政書士が稼ぎ出せる月商はかなり頑張っても100万円前後が限界だと思います。
私が実際に経験してきた肌感覚からしても、そのくらいで大きく違わないと思います。そこから固定費など諸々の経費を抜いたら利益なんてほとんど出ません。
その程度の売上であれば、一般的なサラリーマンの方がずっと稼げるでしょうね。ボーナスも支給されますし。
さらに月商100万円を稼ぐにしても、普通はそれなりに広告宣伝費や交際費などをガッツリとかけていかなければまず無理です。
一人行政書士で限界点に達したらどうするのか、どうすれば売上と利益を伸ばしていくことができるのかということに知恵を絞り、お金を使っていくのが経営というものです。
仕事がないとか儲からないと嘆く前に知恵を絞ってお金を使う
これはもちろん士業も例外ではなく、ごくごく当たり前の経営者思考なのですよね。
そのあたりの経営感覚が乏しい方が『食えない』とか『儲からない』とか嘆いているわけです。
経営者である行政書士も、利益を伸ばすための合理化にコストをかけていく感覚を身につけましょう。これは経営者としてまず当たり前の概念なので。
組織化かアウトソーシングか~事務所の実情に応じた方法論を講じる
利益を伸ばしていくために自らの負担を減らすのであれば、他力を使うしかありません。
ある程度の売上が出るようになれば、税務に関しては税理士の先生に見てもらうなり経理担当の補助者やアルバイト、パートの方を雇うといったようなことも考えられます。
また電話番や日々の雑務をやってもらう事務員さんを雇う、あるいは秘書代行サービスを使うといった選択肢もあるでしょう。
アウトソーシングなり事務所を組織化(法人化も含めて)していくなり、自らの経営状況や実情に応じて負担を減らしていかないと、いつまで経っても売上は頭打ちのままです。
とにかく自分の仕事に専念できる環境づくりを目指していきましょう。
合理化のコストをケチっていると結局儲からない
『そうは言っても他力を使うコストがもったいない』と考える方は少なくありません。先述のとおりベテラン行政書士であっても一人事務所が多い世界です。
営業から顧客対応、役所との折衝や書類作成を数多くこなしつつ、細かい事務所経営の面まで見るのは相当の労力となります。
中長期的に事務所経営というものを考えるのであれば、やはりコストをかけてでも自らの負担を減らしていく必要があるのです。
そして究極的には、自分がいなくても事務所経営は回るというところまでいけば、少なくとも地域内ではかなり利益をあげている事務所として認識されるようになるでしょう。
合理化のためのコストをケチっていては、結局儲からない事務所のままなのです。
実務能力は申し分なくても経営ができないと行政書士は続けられない
昨今の行政書士試験に合格できた方であれば、まず実務面に関して心配することはありません。
行政書士業務のほとんどは、行政書士試験をクリアする勉強よりも楽勝なので。
しかし経営者としての資質というのは実務能力とは関係ありません。経営というのはセンスであったり思考の転換、また運という要素も加わってきます。
事業として利益を出すためには何が必要なのか、やるべきことは何なのかという点をしっかり自覚して実践していかないと、行政書士事務所を経営していくことはできません。
一人でも多く優秀な経営者である行政書士が増えることこそ、業界の活性化にもつながっていきますし、私たちの利益にもつながってきます。
目先の利益だけにとらわれず、ぜひ中長期的な視点をもって経営に取り組んでいきましょう。