行政書士として登録している人の中には、いわゆる副業行政書士という方も少なからずいます。
ここでいう副業行政書士というのは、他士業との兼業ではなく、一般的な企業でサラリーマンとして勤めながら行政書士登録をしている、というケースのことです。
『サラリーマン行政書士』『週末行政書士』などといった言われ方もされていますね。
行政書士は、弁護士や社労士などとは異なり、一般の企業内行政書士というのは禁じられています(行政書士事務所や行政書士法人等の使用人としての登録は可能です)。
しかしサラリーマンとして勤めながら個人で行政書士登録をするのは特に問題ありません。
ではそういった副業行政書士という選択であっても、行政書士として十分な仕事ができるのでしょうか。
副業行政書士のメリットとデメリット
まず副業行政書士のメリットとしては、本業である会社からの給与収入がありますので、生活の基盤は維持しやすいという点があります。
専業行政書士とは異なりサラリーマンとしての安定した収入がありますから、少なくとも通常の生活に関しては安心できるでしょう。
逆にデメリットとしては、業務を受注できたとしても平日の日中に動きにくいことや、顧客に対する柔軟な対応がしにくいという点があります。
顧客から急ぎの連絡が入ったりすることも多々ありますし、問い合わせなどがあっても本業の仕事があるので電話に出られないとなると、大きな機会損失になってしまうこともあるでしょう。
特に行政書士の主力業務である許認可系の業務というのは、基本的にお役所の窓口が開いている平日の日中に動く必要がありますので、そうした点でも難しいことが多々あると思います。
ただいわゆる秘書代行サービスといったものを利用することで、少なくとも電話に出られないといったことで機会損失しないための備えはしておくことができます。
副業行政書士のデメリットを補う方法を考えてみる
副業行政書士として業務を行うのであれば、まずデメリットとなる点を補うための工夫や仕組みを整えていく必要があるでしょう。
一例としては、数人の行政書士でグループを作り、営業や集客活動、顧客との打ち合わせや書類の作成、役所への申請といった業務を分業する、ということも考えられます。
自分は集客や営業活動を中心に行い、日中に動けない業務の一部を他の行政書士にアウトソーシングするといった方法も考えられます。
また業務の選択肢はかなり狭まりますが、平日の日中に動くことが少ないような業務を中心に選ぶなど、業務のスタイルにも工夫が求められるでしょう。
行政書士は専業と副業のどちらがよいのか
では結局どちらの方がよいのかというと、行政書士としての業務がきちんとできていて、それなりに売上が出ているのであれば、別にどちらでも構わないと思っています。
しかし単に行政書士登録しているだけで仕事をまったくやらないのであれば、毎年の会費を払うのはもったいないので退会してしまった方がいいでしょう。
もっと言えば、仕事をしない肩書だけの行政書士に価値はまったくありません。
要は自分のライフスタイルであったり、将来的な展望、行政書士としての収入を十分に確保できるのかどうか、などといった点を考慮してそれぞれが決めればいいことです。
小遣い稼ぎ程度の感覚ではまず仕事はとれません
ただし『毎月10万円程度の小遣い稼ぎになれば』などといった程度の感覚で行政書士が仕事をとることができるほど甘くはありません。
専業行政書士は、1件の仕事をとるためにそれなりの手間やコストを使って集客してきています。
月に10万円程度の小遣いが稼げれば、なんて感覚で仕事がとれると思ったら大間違いです。もし副業行政書士で小遣いを稼ぎたいといった方はやめた方がいいでしょう。
小遣い稼ぎ程度の副業をやりたいなら、行政書士よりも割のよい仕事はたくさんあります。今は人手不足の業界も多いので、他の副業を探した方がいいと思いますし。
行政書士の社会的地位向上のためには、たとえサラリーマンの副業であっても、経営者という自覚をしっかりもって、それなりに稼いでほしいと思いますしね。
利益を追求するという観点では専業が有利
もっとも経営者として、商売人として利益をとことん追求したいのであれば、専業行政書士が絶対的にに有利です。
経営や業務を獲得するための営業活動、業務に携わる時間を十分に確保して動くことができる点は大きなアドバンテージとなります。
経営者マインドをしっかり身につけ、行政書士として正しい方向性で行動さえしていれば、という条件付きではありますが、普通のサラリーマンよりも圧倒的に稼げます。
起業である以上は絶対に儲かる、などという無責任なことは言えません。ただ独身の方で仮に失敗してもリスクが少ない方などは、思い切って専業になってみてもいいかもしれません。
専業になって絶対に稼げるかどうかといった点はもちろん保証できませんが。
絶対に安定した生活を求めるのであれば
ただ専業行政書士で絶対に安定した生活というものを求めるのであれば、専業行政書士にはならない方がよいと思います。
行政書士も商売である以上、絶対に安定ということはあり得ませんので。
そもそも起業して安定を求めるという思考をもち続けているいる以上は、独立開業しても経営は難しいと思います。
少しでも安心して起業したいのであれば、最初は副業行政書士として業務経験を積みながら、十分な準備を整えた上でタイミングを見計らって専業になる、ということでもいいでしょう。
どちらを選択するにしてもメリット、デメリットがあります。
自分の状況などをよく検討しながら、どのスタイルが自分に適しているのかを十分に考えてから開業を検討しましょう。